母は動く!

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「わかったわ。じゃあ、まずやることは1つよね?」 「な、何?」 「検査よ!DNA鑑定。貴方と友里花ちゃん……私との間に父子関係がないことを証明するの。」 「君が協力してくれるのか?」 「それしかないでしょ。はい、これ。」 私は、バッグの中からそれを出した。 「…これは?」 「検査キット。取り寄せたの。大丈夫。認可された検査機関よ。眼の前でやらないと信頼できないだろうから、ゆう……娘さんがまだ寝てるようなら病室の隅で検体採取しましょう」  こそっと病室を覗くと、まだ祐子はグッスリ眠っていた。  それでも二人で祐子さんに見つからないよう、個室に備え付けられたユニットバスの中に入って、綿棒を口の中に入れ擦る。今は髪の毛やら唾液でも高精度で鑑定できるらしいが、これが一番確実なんだとか。  採った検体を梱包し友祐に渡す。 「私が預かるより安心でしょ?費用の方も振り込んでね。女子高生ってそんなにお金持ってないから。」 「……ありがとう。でも、なんで…」 「貴方のためじゃないわよ。まあ、少しはあるけど。子供たちが心配だっただけ。」 「……ごめんなさい。この間は君に酷い態度をとって。」 「自分の子どもたちを守ろうとしたんでしょ?気持ちは分かる。確かに褒められた態度ではなかったけどね。あの母親はともかく産まれてきた方は親を選べるわけじゃないし。」 「……すまなかった。」 「……いつまでもここにいるわけにもいかないなら、出るね。じゃあ、郵送よろしく。あ、法的な鑑定書が必要なときはそれじゃだめなんだって。法的な機関に出向いて検査して、証明書もらうみたい。でもたぶん、あの人、法には訴えたりしないだろうからそれで十分だと思うわよ。一週間から10日で結果出るらしいから、この番号に連絡して。」  私は友里花ちゃんのスマホの番号を教えた。  友里花ちゃんのスマホは顔認証だったみたいで使えたのだ。もちろんLI○Eやメールは覗いていない。友月とのLI○Eとか興味津々だけどね。 「何から何までありがとう。」 「うん。……祐子……娘さんも貴方もちゃんと食べて寝てね。…奥さん、きっともうすぐ目覚めるから。」  グッと込み上げてくる涙を堪えて私は最後に愛しい娘の寝顔を一目見てから病室を出た。  だから私は知らなかった。私が出ていった後、祐子がムックリと身体を起こし、友祐さんに向かって 「あの子、何者?」と聞いたことを。
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