子どもたち

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子どもたち

 一週間後。  友祐さんから電話が来た。  意識は取り戻さないものの透子は自宅に連れ帰り自宅療養になったと。  天夜の本家から自宅療養のためには本家のほうが都合がいいだろうと提案され 、一時的に家族で本家に移った。そちらで話をしたいので友里花親子に来てほしい、とのことだった。  娘から伝言された友里花の母親は 「なんだろう?財産分与とかの話かしらね?」などとどうかしてるとしか思えない発言をしている。  DNA鑑定を要求されるとか、詐欺で訴えられるとか考えてないんだろうか?  当日、友里花の家に車が迎えに来て、天夜の本家に連れて行く、と言われたとき、 「これって容疑者の連行みたいよね」と思った私に対して、友里花の母親は 「わざわざお出迎えだなんて、すごいわね。」とワクワクしている。  車は運転席との間に仕切りがあって、後部座席の様子がわからないようになっていた。  友里花の母親は「セレブっぽい!」と大はしゃぎだ。  そして、 「あの友祐(ひと)、そこそこ天夜の家に大事にされてるのね?」と言う。 「どういう意味?大事にされていないと思ったの?」 「だって、月がつかないじゃない。」 「え?」 「あそこの家って、後継者候補には名前に『月』が付くのよ。でもあの人にはつかないじゃない?だからはじめから期待されていないのかなぁ、って思ってね。ああいううちだから妾の子とかなのかな、って噂だったから。」 「で、でも息子さんは友月っていうよ。」 「孫は可愛いんじゃない?」    おかしいな、そういえば、何で友祐さんには月がつかないんだっけ?なんだかそのことを考えるとモヤモヤする。ここのところ透子の記憶がたまに抜けることがある。だんだんと穴が増えていく感じだ。もしかしたら透子の身体が目覚めるしるしなのかも。  そうなったら友里花ちゃんの居場所もわかるんだろうか?  考えているうちに大きな家の前に車は止まった。  天夜の本家だ。
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