子どもたち

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「いらっしゃいませ。本日はわざわざお越しいただきありがとうございます。」  だだっ広い玄関に現れたのは40代?50代くらいのものすごい美人だった。  あれ?誰だっけ?こんな美人忘れるわけないのに。本家のお手伝いさん?いや、奥様?だとすると親戚ってわけよね?  またまた透子の記憶がブレる。薄れる。わからない。    この本家って言われる家も覚えがない。あまり透子は来たことがなかっただろうか?友里花のお母さんの言ってた通り友祐一家は冷遇されていたんだった?  でもだったらわざわざ自宅療養に本家に移される理由がわからない。    通されたのは応接間のようだ。  立派なソファにはすでに透子以外の家族が揃っていた。友祐、祐子はじっと私達をみて、友月はびっくりしたような表情をしていた。私達が来ると知らされていなかったのか? 「ごめんなさい。母はあれからまだ目が覚めていなくて。でも反応が少しずつでてきたから、間もなく目覚めると思うのよ。」  祐子が、そう言って微笑む。 「いえ、こちらこそお礼に伺うべきだったのに遅くなってすみません。事故のとき、天夜さんが庇ってくれて私は、軽症だったと聞きました。ありがとうございました。」  中身は透子なのに透子にお礼を言うのもなんだか変な感じだが、母親が何も言わないので一人で頭を下げる。  そして隣の母親は言わなきゃいけないお礼は言わないのに余計なことはすぐ口にする。 「羨ましいです。お金がある人って。こんな素敵なお宅で療養できるんですね。うちなんてこの子にろくな治療も受けさせられませんからねー。傷跡も残るかもしれないんですよ。父親の援助でもあればいい治療受けさせられるだろうけど。」  厚顔無恥のセリフにこちらの顔が赤くなる。 「……そうですか。大変ですね。」  祐子は静かに返答する。余計なことは言わない。 「友里花、傷跡って、そんなに酷いの?ちゃんと治療しよう?俺、バイトとかするから。治療費は気にしなくていいから。」  友月は友里花のことを気にするあまり、この場の殺伐さに気づかない。 「友月、くん……。大丈夫だから。傷跡なんてそんなに酷くないよ。野球部、バイトなんかできないじゃない。部活やるために高校入ったんだからちゃんと頑張らなきゃ。」 「あら、友里花、息子さんとは小学校以来あってないとか言ってたけど、今もお付き合いがあるの?もしかして恋人、とか?」  ニヤニヤと友里花の母親は笑う。 「違うから。たまたま高校が同じなだけ。」  冷たい口調は母親には響かないようで、逆に友月は酷く傷ついた顔をした。  
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