日常と思い出

2/4
前へ
/26ページ
次へ
その1  一切無視。本人が悪いんだから修学旅行に参加できなくてもやむ無し。 その2  学校や旅行会社に問い合わせて明日以降でも間に合うか聞く。 その3  コンビニに行ってマイナンバーカードで戸籍抄本をとり、学校にとどける。  本当に子供の成長を考えたら1か2だろう。    けれど、学校に迷惑をかける上に、この手の手続きやルールを破ると、部活の方針で部活に参加できなくなる。やっと手にした背番号。  私はため息を付きつつ、息子の部屋の引き出しから息子のマイナンバーカードを取り出して、学校近くのコンビニまで急いだ。  車は夫が乗っていってしまった。仕方ない。バスに乗った。  30分ほどたって降りるとコンビニのドアをくぐった。  多機能コピー機で戸籍抄本をとる。備え付けられていた封筒に入れて、高校に向かおうとしていた。コンビニの前のベンチに息子と同じ制服を着た女の子がぼんやり座っていた。泣き出しそうな、途方に暮れたような様子が気になった。    ギリギリ40代。あと数年で50になる私。家族からは「お節介」だの「オバサン気質」だの言われるが、私は困っている様子の人が気になって仕方がない。  迷子の保護回数、35回。迷老人の保護2回。ともかく、ほっとけないのだ。  これが「オジサン」なら不審者と間違われることも多いだろう。だけど私はオバサンだ。飛び抜けて美人でもなければブサイクでもない。背も高くもなければ低くもない。  つまり、どこにでもいるオバサン。声を掛けられた方も警戒心は少ないのか、すぐに助けを受け入れてくれる。  しかも。今目の前にいる女の子のことを私は知っている。    新山友里花ちゃん。私の息子、友月(ゆづき)の小学校時代からの同級生だ。  何度か同じクラスになったことがある。正直なところ、彼女のお母さんは好きになれなかった。専業主婦ということもあり、役員を何度か引き受けていた私だが、彼女は一度として役員を引き受けたこともなく、授業参観には派手な格好で現れ、知り合いの人と教室にも入らずお喋り。懇談会の前にはとっとと帰って行った。    別に役員を回避したからと言ってその人を否定することはない。それぞれの家庭の事情もある。実際、彼女はシングルマザーという話だったし仕事もあるのだろう。ただ、一度彼女にクラスの係の一つをお願いしようと電話をしたある役員が、「そんな暇はない。お気楽な人たちでやっていただきたい。」と言われたとショックを受けていたことがあり、それ以来なんとなく避けていた。  言われた役員さんが、「私もシングルなんだけどねー」と苦笑していたことが忘れられない。彼女は3人の子供を死別した旦那さんに代わって家業をやりながらもできることがあれば、と役員をしていたのだから。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加