日常と思い出

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 そんな母親の娘の友里花ちゃんだったが、彼女は実に控えめな感じのいい女の子だった。  小学2年のときPTA主催の学年行事で、親子ミニ運動会をしたことがある。  もちろん平日だったので来れないお母さん、お父さんは多かったから、親とのペア競技は来ているお父さんお母さんたちが交代で何度も走った。もちろん私も。  その「今日だけ仮初め親子ペア」を組んだ児童の一人が友里花ちゃんだった。友里花ちゃんのお母さんは不参加だった。  友里花ちゃんと手を繋いで走り出す。二人で立っているポールを折り返して帰ってきて次の人にパス。バトン代わりにボールを使っていて、親役がドリブルしてもいいし、持ったまま走ってもいい。そこは低学年なので臨機応変だ。  最初は手をつなぎながら片手でドリブルしていた私だが、途中で友里花ちゃんが転んだ。他のクラスが追い越して行くことに友里花ちゃんはショックを受けたようで動けなくなった。  考える前に私は友里花ちゃんにボールを持たせて友里花ちゃんをお姫様抱っこした。 「え?え?」ボー然とする友里花ちゃんを抱きかかえたまま、ポールを回り、自陣に戻る。友里花ちゃんのボールを次にパス。 「友里花ちゃん、怪我はない?」と聞くと、友里花ちゃんはコクンと頷く。 可愛い。 「お、重くなかった?」友里花ちゃんが心配そうに言う。 「えー?友里花ちゃんなんて軽い軽い!うちの友月に比べたら羽みたいだよ。」 「それじゃ僕がデブチンみたいじゃんか!」  後ろから友月がふくれっ面で文句をいってきた。 「あら、いたの?友月は野球始めてから身体ががっしりしてきたからね。筋肉って重いんだよね。マッチョだね!」 「ま、ね。」  満更でもなさそうに力こぶを作って見せる。 「友里花ちゃんもなにか力仕事があったらうちの友月にお願いしなね。頼りになるよ」 「……うん。ありがとう、友月くんのお母さん。」 もう一度言おう、可愛い。  それから9年の月日が流れた。  友月は中学は家庭の方針で私立に入った。そのまま高校に進学する予定だったが、どうしても野球を本格的にやりたい、と外部の公立高校に進むといい、私も夫の友祐も了承した。  因みに友月の姉の祐子はそのままエスカレーターにのり大学生になった。  友里花ちゃんと友月は同じ高校に通っているんだ、と今面影を残しながらもすっかり大人になり美少女になった友里花ちゃんを見て初めて知った。
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