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良人と書いて夫と読むらしい
目を覚ますと、そこには医者らしき人がいた。
「大丈夫ですか?」
声が出づらくて瞬きで返事をする。
「ここは病院です。事故にあって運ばれたんですよ。」
ハッとしてすぐに友里花ちゃんのことを聞こうとした。あの子は?あの子は大丈夫?
「あ……いっしょに……いた……」
え?自分の声に驚く。私の声、こんなだった?
「あの女性は知り合いかな?最初はあなたのお母さんかと思ったんだけど、身分証明書の名前が違ってたから。あなたのお母さんにも連絡が取れたからね。間もなくいらっしゃるよ」
何を言っているの?私のお母さんは、随分前に亡くなった。全然話が分からない。
そうこうする間に病室にバタバタと女性が入ってきた。
「友里花!なにやってんの!あんたって子は!」
そこには久しぶりに見る派手な格好をして年に似合わないメイクをした友里花ちゃんの母親がいて怖い顔で私を見ている。
はい?私、あなたの娘を全力で助けたつもりですが。
その友里花ちゃんはどこにいるんだろう?
医者が友里花ちゃんの母親に
「お静かに願います。こちらのお嬢さんはあなたの娘さんで間違いありませんね?」
「あ、はい。娘の新山友里花です。」
え?ちょっと、なにいってんの?と手を伸ばそうとしてはっとする。
あれ?なに?指輪、結婚指輪がない。オマケになにこれ?手が若い!
信じられなくて顔を触ってみる。髪の毛が長い。肌が若い。
「か、鏡、ありますか?」
おそるおそる尋ねると
「大丈夫よ。顔に怪我はなかったから。一緒にいた女性が庇ってくれたお陰みたいよ」
看護師さんらしき人が、それでも小さな鏡を持ってきてくれた。
奪い取るように受け取った鏡の中。そこには17歳の美少女、新山友里花ちゃんが呆然とした顔でうつっていた。
どうなってるの?じゃあ、私は?天夜透子の身体はどこに行ったの?そして友里花ちゃんの心は?
え?あのアニメや映画のように入れ替わってるの?もし、友里花ちゃんが目覚めてアラフィフのオバサンになってたら友里花ちゃん、ショックで心臓止まっちゃうよね?え?そうなると、どっちの心臓が止まるの?あー、私混乱してる!
助けて!友祐さん!私は自然と夫の名前を無言で叫んでいた。
「先生!もう一人の患者さんのご家族が見えられました。」
「あの、妻がこちらに運ばれたと……」姿を現したのは夫、友祐さんだった。
思わず名前を呼びそうになり、グッと耐える。友里花の姿で夫に声をかける訳にはいかない。
しかし、そんな夫に声をかけたのは、まさかの友里花の母親だった。
「天夜さん!来てくれたの?友里花のために!」
………………は?
友里花の母親以外のその場にいた人間が意味が分からず無言になる。
夫も信じられないようなものを見たように友里花の母親と友里花の姿をした私を見つめていた。
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