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「な、なぜここに君がいるんだ?新山さん」
友祐さんは驚きうわずった、だけど、とても嫌悪感を感じさせるような声で友里花ちゃんの母親を睨みながらいう。
「友里花が事故にあったって聞いて飛んできたんです。この子が、友里花です。」
「………失礼する、妻がここに運ばれたと聞いて来ただけですから。」
「え?……奥様が?」
様子を伺っていた看護師が
「こちらへどうぞ」と友祐さんを別室に連れて行く。
待って!行かないで!友祐さん!そう言いたい。でも出来ない。
どうしよう。どうしたらいい?
友里花ちゃんの母親はもうすでに友里花ちゃんに関心がないらしく、それよりも出ていった友祐さんに気持ちが行っているようだ。
「あんた、天夜さんの奥さんと事故にあったの?」
夫に話すトーンとは違った低い声で友里花に尋ねる母親。病室は、二人きりだから素がでちゃうのかしら?
「……はい。」
仕方なく返事をする。
「ふーん、死んだかしら?そうなったらお手柄ねぇ、あんた。」
「え?」
何言ってるんだろう、この母親。
「そうなったらさ、あたし達を家に入れるかもね。どうする?天夜グループの、ムーンリットグループの華麗なる一族の仲間入りよ!シンデレラストーリーどころじゃないわよねぇ。」
「…どう…いう…意味?」
「ついこの前、教えてあげたでしょ?あの人が、天夜友祐があんたのお父さんなの!あんたの名前、友里花だってあの人から一文字もらったんだから。」
ガンと頭を殴られたような衝撃だった。
友里花の母親がそれからも下品な色の口紅をつけた口から、その口元は酷くニヤけて歪んでいたが、何かしらの言葉を発していたが、何も理解できなかった。
鎮痛剤が聞いているのか、目が開けていられなくなってもう一度私は目を閉じた。
目が覚めたら私の身体に戻っていますように。これが全て悪い夢でありますようにと願いながら闇に沈んだ。
しかし、そんな願いも虚しく、すっかり暗くなった病室で目覚めた私は、まだ新山友里花だった。
友祐さんの妻ではなく、もしかしたら、あの母親がいう通りなら友祐さんの娘のままだった。
友里花ちゃんの母親はもうすでにいなかった。
暫く考える。かすり傷の友里花は明日には退院だろう。天夜透子は?今ならこの病院にいる。
天夜透子を探してみよう。私は自分の病室をでて、友祐さんが案内された方向に歩き出した。
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