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母は動く!
戻ってませんでした。まあ、そりゃそうよね。そして、若いってすごい。擦り傷と打撲程度の友里花ちゃんの身体はもう入院の必要もなく。
退院となりました。
ますます透子と接触できない。まあ、接触できたとしても、どうすれば本来の身体にもどれるのか、その方法はわからないんだけど。
それより心配なのはホントに意識不明の透子の中に友里花ちゃんの意識?魂?心?まぁ、中身があるかどうか。
もしかして、私が勝手に友里花ちゃんの中にお邪魔してて、オバサンパワーで友里花ちゃんを押しやってるんじゃないかと、何度も友里花ちゃんに語りかけてはみたものの全く反応なし。
どうしたらいいのかさっぱりわからない。
霊媒師とかに相談にいけばいいのかしら?
そしてもう一つの悩み事。
「友里花!さっさと帰るわよ!」
この母親だ。
どうやら今日も友祐さんに会えるとめかしこんできたのに全く会えず機嫌が悪い。
入院費が高いとか文句を言ってる。事故の加害者から保険金がおりると昨日自動車保険の担当者から連絡があったらしいのにね。
「あいつから、ニュース見たって連絡来たのよ。どうせ保険金おりたら少し融通しろって催促よね。誰が貸すかってーの!」
「あいつ?」
「拓人よ!先月出てったでしょ?あのバーテンダーくずれ。」
「アナタの…いや、お母さんの元カレ?」
「あんなの、カレなんかじゃないわよ。ただのヒモ!金もないくせにあんたにまで色目使っちゃって!アンタもアンタよね。母親の男に媚びちゃったりしてさ。」
………なんだ、この親。友里花ちゃんの身体をそっと抱きしめてあげる。
「………ねえ、本当にあの人、天夜さんが私の父親なの?」
思い切って聞いてみる。こんな人に友祐さん、惹かれたの?
「うふふ、そうよ。派遣でね、天夜さんの会社に行ってね、飲み会で意気投合して。それからまあ、好い仲になったってわけ。あのあと私は、派遣の期限が切れたし、天夜さんは別の支店に行っちゃったから付き合ってたのは短い期間だけど。別れてからアンタがお腹にいたのが分かってね。私、生理が不規則だから、気づいたときはもう堕ろせない時期でさー。天夜さんとも連絡取れなくなってたし。なんたってムーンリットグループのお偉いさんだからね、おいそれと会えなくて。」
「じゃあ、いつ再会したの?」
「それがさ、2週間前偶然馴染みのお客さんが接待でうちの店使ってくれて、連れて来たのが天夜さんだったわけ。連れてきた人がトイレに立って二人になったとき、名刺貰って、実はあの時、子供が出来て育ててきました。って言ったの。」
どうやら友里花の母親は水商売をしているらしい。そこのお店に友祐さんが接待で連れてこられた、ってことか。
「そんな話信じたの?」
「最初は信じなかったわよ。でも覚えはあるだろうし、アンタに父親の名前の一文字貰って付けました、って言ったら黙っちゃったわ。」
「……天夜さんの息子さんと私、小学校の同級生だったのよ?知ってる?」
「え?そうなの?なんで?なんであんな家の子供が公立小学校に通ってるの?」
「それは……、知らないけど。家の方針とか言ってた。」
「ふーん。じゃあ、あの人の奥さん知ってるの?どんな人?」
「どんなって……普通の人。学校の役員とか頑張ってた。」
「どうせ、成金趣味か、ブスよね。」
悪かったな!
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