詩夏の誇り

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 そんな風に思いつつ、詩夏はゆるゆると首を横に振る。 「……凜風様からのようだし、突き返しておいて」  それだけを告げ、詩夏は箱を机の上に置いた。 (……凜風様が行動されるのは早いとは思っていたけれど、まさかここまでとはね)  箱の中身を思い出し、詩夏は苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべた。 (全く、舐められては困るわ)  彼女は詩夏が占者だと確信を持っている。その情報をどこから手に入れたのかはわからないが、きっと相当信頼のおける人物から手に入れたものなのだろう。……まさか、天佑が? そう思ったが、それはないなと思い直す。天佑がそういう風に情報を流すわけがないと理解しているからだ。 「……はい」  時間差で、美玲が深々と礼をしてそう返事をくれた。そして、部屋を出て行こうとした際に不意に詩夏の方に視線を向ける。彼女の目には、動揺の色が映っているようだった。 「ところで、詩夏様はどうしてこちらが凜風様からのものだと……?」 「……あら、違う?」 「い、いえ、凜風様の女官が届けに来たので、そうだろうとは思っていましたが……」  どうやら、彼女は詩夏が送り主の正体を知っていたことに驚いているらしい。……それもそうか。美玲は詩夏と凜風のいざこざを知らないのだから。
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