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秘密
わたしには秘密がある。わたしは鬼だ。
■
アラームが鳴る前に目が覚め、まだ薄暗い天井を見上げる。
喉が乾いてサイドテーブルへ手を伸ばした。
「……既読スルーか」
就寝前に送ったメッセージとスタンプに「そりゃそっか」とごち、身体を起こす。運動をしていないのに筋肉痛みたいな重さを感じる。
せっかく希望する高校に進学したものの、入学式以降の三日間を体調不良で休んでしまっていた。
きっとわたしが休んでいるうちにクラスの皆は仲良くなっただろう。出来上がった輪の中に入るのは勇気がいるものだ。ますます憂鬱になる。
「はぁ、せめて涼くんが一緒に登校してくれたらな」
壁にかけた真新しい制服を横目に窓を開けた。向かいに住む涼くんーー夏目涼くんとは幼馴染みで、クラスメートの関係。
毎朝ジョギングしている涼くんも流石に寝ているみたい。ストライプ柄のカーテンが重く引かれている。
涼くんは高校でもサッカーを続けるんだろうか。部活で忙しくなれば、わたしを構う暇はないに違いない。
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