四幕 ①涼州群雄

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 通りを闊歩する身なりの整った人々。  彼らは、口を開けば生活が苦しいと文句を垂れる。  しかし、食事をすることができ、着る物もある。  屋根のある場所で生活をし、洗濯された着物を着て、風呂に入ることもできる。  病になれば薬を求め、たまの贅沢と言って酒を飲むことだってあるだろう。  そんな人間には、本当の貧しさなどわからない。  誰もかれもが判を押したように人間として生きている。  まだ幼い少年は、濁った眼で通りを歩く人間を、まるで別の生き物のように見ていた。  衰弱してろくに呼吸もできなくなった弟を抱きしめながら、ただ、少年はその別の生き物を見続けていた。
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