独りぼっち

3/3
前へ
/135ページ
次へ
「じゃあ、私……枝とか集めてくるから」  他の候補生達が、各々騎兵団の面々と会話を楽しみつつ準備を進める中、ノルンは一人森の奥へと歩いていった。  今回は実習という事もあり、候補生一人一人に騎兵団の人間が付く事となっている。  勿論、ノルンにも付いているので、担当の護衛が慌てた様子でノルンの元へと向かった。 「なぁ、君……単独行動は厳禁だ」 「……すいません」  ノルンは素っ気ない態度で謝ると、黙々と枝を集めていく。  夕闇に飲まれる森の中に、溜め息が吐き出された。 「そんな態度だと、修道術師(シスター)になった所で護衛兵は誰も寄り付かないぞ。いつもそうなのか、君は?」 「いえ、そんな事は……」 「なら、俺に何か落ち度があるって言いたいのか? 候補生の分際で、随分な物言いだな」 「……っ」  相手の怒りも言い分も分かる。  それを募らせ、迷惑を掛けているのは自分だから。  でも、その理由を言えない。  だから、誤解は解けないままで良い。 「先に、皆の所へ戻って下さい。何か有れば、叫ぶので──」  ノルンが振り返った時には、護衛の男は既に背中を向けて歩き出していた。  最後の言葉が届いていたのか分からない。  けど、無性に一人に成りたかった。 「はは……」  いや。  もう一人だったのだ。  震える手でポケットの中を探り、ソレを掴む。  握り潰して一度棄てた、それでも結局拾い上げてしまった、手紙である。 「世界で独りぼっちになるって、考えてもみなかった……」  それでも流れない枯れた涙に、悲しみに沈めない冷酷な自分に。  今の現実に。  ノルンは、打たれていた。  
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加