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「じゃあ、私……枝とか集めてくるから」
他の候補生達が、各々騎兵団の面々と会話を楽しみつつ準備を進める中、ノルンは一人森の奥へと歩いていった。
今回は実習という事もあり、候補生一人一人に騎兵団の人間が付く事となっている。
勿論、ノルンにも付いているので、担当の護衛が慌てた様子でノルンの元へと向かった。
「なぁ、君……単独行動は厳禁だ」
「……すいません」
ノルンは素っ気ない態度で謝ると、黙々と枝を集めていく。
夕闇に飲まれる森の中に、溜め息が吐き出された。
「そんな態度だと、修道術師になった所で護衛兵は誰も寄り付かないぞ。いつもそうなのか、君は?」
「いえ、そんな事は……」
「なら、俺に何か落ち度があるって言いたいのか? 候補生の分際で、随分な物言いだな」
「……っ」
相手の怒りも言い分も分かる。
それを募らせ、迷惑を掛けているのは自分だから。
でも、その理由を言えない。
だから、誤解は解けないままで良い。
「先に、皆の所へ戻って下さい。何か有れば、叫ぶので──」
ノルンが振り返った時には、護衛の男は既に背中を向けて歩き出していた。
最後の言葉が届いていたのか分からない。
けど、無性に一人に成りたかった。
「はは……」
いや。
もう一人だったのだ。
震える手でポケットの中を探り、ソレを掴む。
握り潰して一度棄てた、それでも結局拾い上げてしまった、手紙である。
「世界で独りぼっちになるって、考えてもみなかった……」
それでも流れない枯れた涙に、悲しみに沈めない冷酷な自分に。
今の現実に。
ノルンは、打たれていた。
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