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異変
どのくらい時間が経っただろうか。
もう夜の帳が森を支配し、僅かな月明かりが頼りとなっている。
そろそろ戻らなければ、また説教を受ける事になってしまうだろう。
ノルンは腰掛けていた倒れた大木から飛び降り、来た道を戻り始めていた。
と、その時。
頭上の葉枝が大きく揺れ、人影が落ちて来た。
「きゃ!?」
ノルンはギリギリの所で避ける事が出来たが、上から落ちて来た人影は地面に激突した。
幸い、葉が積もった場所に落ちた為、衝撃は幾らか緩和されたようだが。
「あ~~~もぉ、痛ぁ~~~!」
落下した人物は落ち葉の中から顔を出し、痛めたであろう肩を擦る。
女性であった。
「あの、大丈夫ですか……!?」
「何とかね。木の枝飛び移ってきたら、うっかり鳥の巣の近く通っちゃってね。親鳥怖……!」
女性は身体に付いた落ち葉を落としながら肩を回した。
「え? 飛び移ってきた?」
ノルンは、首が痛くなるまで上を見上げた。
其なりに高さは有る森なのだが。
「脅かしちゃってゴメンね~。アタシはミア」
「あ、ノルン……です」
「お、その格好、もしかして修道術師ちゃん?」
「はい。といっても、まだ候補生ですけど」
「そっかそっか。うん、頑張って。あと、ここで見た事聞いた事、特にミアお姉ちゃんに関する事は、誰にも言っちゃ駄目よ? 約束ね」
「あ、あの。ミアさんって──」
「はい、質問は一切受け付けません。じゃ、ミアお姉ちゃんは華麗にこの場を去──」
言い掛けて、ミアは顔を青くした。
自分のポケットを何度探っても、目当ての物が出てこない。
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