キセキに出会った日

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「さて、と……」  生の余韻に浸る私を近くの草むらに下ろすと、女の人は吸っていた煙草を小瓶の中に捨てて、再び浅い水の流れの中へと入っていった。  更にフードを取って、鮮やかな金髪を朝陽の下に晒す。  そうして、胸の前で祈りを捧げる様に両手を組んだ。  すると、女の人の身体から黒い霧状のモノが吹き出して、水の中に次々と溶けて行く。  それに伴って、青白く輝く光の球体が水の中から沢山、本当に不思議な事だけど浮かんできた。  その球体は流れに逆らう様に出現を続け、洞窟の中にまで到達した。  女の人は祈りの体勢を崩すと、両手で水色の球体を掬い上げる様に集めて行き、やがて洞窟の前で足を止める。 「こんなもんじゃねぇだろ? 自然の力ってヤツは。私が手を貸すぜ」  そう一言言って、女の人は集めた球体を洞窟の中へと放った。  光が、ゆっくりとした足取りで奥へ奥へ移動して行くのが、私にも見えた。  女の人は、満足気に私の隣にやって来た。  今の光は一体何だろう。  この女の人は何者で、今何をしたんだろう。  様々な私の疑問が泡の様に浮かんだ最中、洞窟内から滝の音が地響きと共に聞こえた。  そして直ぐに、洞窟の入口から大量の水が吹き出し、凄い勢いで目の前を流れていった。 「え? え?」  辺りはあっという間に川となり、水位が上がって私の脚を濡らした。  冷たい、けど、透き通っていて綺麗な水だった。
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