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「先生、他にどんな条件が必要なのでしょうか?」
一人の少女が、お手製の椅子から立ち上がって挙手をした。
勿論、長机も少女達が自分で木を倒し、作った物である。
所々に花が飾られているのは、年頃の趣味だ。
「そうですね……。修道術師は、必然的に長距離を歩きます。険しい山、深い森、砂地や雪原。そういった悪路を歩き続ける歩法能力。そして、植物や水といった自然の恵みから薬を作り出す植物薬学も重要な要素です」
と、葉擦れの音と共に草の香りを孕んだ温かい風が『講堂』を通り抜け、天井から射し込んでいた木漏れ日が揺れ動いた。
その心地好さに、一人の少女の顔がニンマリと解れる。
「はぁ……気持ち良い……」
その、ポツリと呟いた一言は風に掻き消される事無く。
中年の修道術師の耳に入った。
「ノルンさん? 講義中ですよ?」
「あ、ごご御免なさい! つい!」
赤面ついでに狼狽したノルンが椅子から立ち上がると、他の少女達がクスクスと笑った。
「立ち上がったのなら、何か発言をどうぞ」
「ええ……!? えっと……」
微睡みから完全に現実に戻されたノルンは、無い頭を必死に回して考え。
そして。
「あ、あの! どうすれば修道術師は杖を持てるんでしょうか!?」
「は……い?」
ノルンの突拍子も無い発言に、その場にいた全員が呆気取られて固まる。
余りにも静かだったので、森の向こう側から野鳥の声が聞こえた。
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