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しかし、吊り橋に足を踏み入れた瞬間。
足場はギシミシと音を上げ、吊り橋全体が上下した。
嫌な汗がノルンの頬を伝わる。
「うう……!」
横を通るロープを掴み、涙を堪えながら前進するノルン。
と、ロープを握った事で気が付いてしまう。
この両側を通るロープが、自分の腰ぐらいの高さしか無い事に。
つまりは手摺のような存在ではなく、あくまで吊り橋を成立させる為に必要なロープなのだ。
横を見ると、折り重なった枝葉が遥か下で揺れ動いている。
今まで散々体験してきたが、転落は即座に死に繋がるだろう。
(ノルン、ほら。落ち着いて。アタシがついてるから)
「う、うん……」
(それにしても、ロウのヤツ。白状ね)
「そ、そんな事無いよミア。此所まで沢山助けて貰ったし。色々と教えてくれたよ。今だけは、私の力で頑張──」
言い掛けた時。
片側のロープに両手で掴まった際、足が縺れて。
背負っていたリュックが、ロープの外側へと出てしまった。
「あ……」
そのリュックの重さに引かれて足を滑らせ、ノルンの身体は吊り橋から、投げ出された。
反転してゆっくりになった視界は遠ざかる夕刻の空を残酷に写し、浮遊感が襲う。
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