道標

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「く、このっ!」  空中で交代したミアが、落下が始まるより一瞬速く吊り橋に手を伸ばした。  が、届かない。  無情にも落ちていく、その手を。  ギリギリでロウが掴まえた。 「何やっているんだ、君達は」  呆れ顔でミアの顔を見るロウだが。  彼は片足を吊り橋に引っ掛けた状態で逆さまになり、ミアの体重と荷物の重さを支えていた。  宙吊りの状態である。 「アンタが先に行くからでしょ?」  言いながらも、ミアはロウのもう片方の手を取り、ロウの身体を少し登った所で吊り橋に器用に飛び付いた。  そして、ロープに足を掛けてフワリと足場に着地する。 (ミア、ロウさんが! ロウさんを早く!) 「はいはい……」  ミアはロウへと手を伸ばし、引き上げる。  直ぐにミアと交代したノルンがロウへと頭を下げる。 「ごめんなさいごめんなさい! 私の不注意で、二人を危険な目に! 本当にごめんなさい!」 「あ、いやノルン君。君が無事なら、それで良いんだ。君への配慮が足りなかった僕の責任だ」  余りのノルンの剣幕に、ロウは少し困った表情となる。 「何でそんなに冷静なんですか!? もしかしたら、ロウさんまで落ちてたかも知れないんですよ!?」 「──君を。いや、君達を無事に国に連れて行くのが、護衛である僕の任務だ」  ロウは立ち上がり、ノルンの手を引いて立ち上がらせる。  そして、ノルンの頭に手を乗せて言うのだ。 「その為なら、僕は命だって懸けるさ」
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