素敵な気持ち

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「……修道術師(シスター)が杖を持ち歩く事は有りません」 「あれ?」  ノルンが小首を傾げる。  再び『講堂』に笑い声が戻った少し後、遠くで鐘の鳴る音が聞こえた。  本堂である教会が鳴らす、昼食の合図である鐘声だ。 「では、今日は此処まで。ノルンさん以外は、解散して下さい」 「う……」  またお説教かと、頭を抱えたノルン。  「頑張ってね」「席取っておくから」と肩を叩きながら解散して行く少女達。  一人になったノルンは起立して俯いたまま、女性の言葉を待った。 「──会ったのですか?」  先ず掛けられた意外な言葉に、ノルンは顔を上げた。  女性は詰め寄る様に此方の顔を見ている。 「杖を持つ修道術師(シスター)に、会ったのですか?」  常に冷静である筈の面持ちの下に、幾ばくかの無邪気な興奮を忍ばせ、女性はノルンへと再度訊ねた。 「はい。二年位前に、ですけど。洞窟の中で動けなくなった私を、助けてくれたんです」 「そう、ですか……。ノルンさん、修道術師(シスター)は確かに杖を持ち歩きませんが、例外は有ります」
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