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夕闇の中でロウは笑う。
不謹慎にも、ノルンは惚けてしまった。
護衛兵に関して、少し偏見を持ち過ぎていたのかも知れない。
「ま、まあ。あの落ち方は予想していなかったけどな」
「え、あ。私の事、見ていてくれたんですか?」
「当然だろ。しかしアレじゃあ、僕の命が幾つあっても足りない。それで、だな。決して卑しい意味じゃあなくてだな」
「? はい?」
首を傾げるノルンの前に、少し狼狽した様子の彼の手が差し出される。
ロウは顔を背けながら、言うのだ。
「ほら、一緒に渡るぞ」
「……え……。あ! は、ははい! お、お願いします!」
ノルンはロウの手をギュッと掴む。
そして、手を引かれて吊り橋を渡って行く。
(何かさ、アタシ思い出しちゃった。朝食べた果実の味)
「な、何の話……?」
(いや、この状況とさ。似てるなぁ~~ってこと)
「だ、だから何?」
ノルンが小声で訊ねると、ミアは少しの間を置いて答える。
(……甘酸っぱい)
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