道標

6/6
前へ
/135ページ
次へ
 夕闇の中でロウは笑う。  不謹慎にも、ノルンは惚けてしまった。  護衛兵に関して、少し偏見を持ち過ぎていたのかも知れない。 「ま、まあ。あの落ち方は予想していなかったけどな」 「え、あ。私の事、見ていてくれたんですか?」 「当然だろ。しかしアレじゃあ、僕の命が幾つあっても足りない。それで、だな。決して卑しい意味じゃあなくてだな」 「? はい?」  首を傾げるノルンの前に、少し狼狽した様子の彼の手が差し出される。  ロウは顔を背けながら、言うのだ。 「ほら、一緒に渡るぞ」 「……え……。あ! は、ははい! お、お願いします!」  ノルンはロウの手をギュッと掴む。  そして、手を引かれて吊り橋を渡って行く。 (何かさ、アタシ思い出しちゃった。朝食べた果実の味) 「な、何の話……?」 (いや、この状況とさ。似てるなぁ~~ってこと) 「だ、だから何?」  ノルンが小声で訊ねると、ミアは少しの間を置いて答える。 (……甘酸っぱい)  ◆
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加