第五樹

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「へぇ。……あ、でも。森が成長したら、ごちゃごちゃになりませんか?」 「神暦樹は、各々の領域を侵害しないように範囲を広げる性質が有るんだ。必ず、一定の距離を保って成長する」 「あ。それで、吊り橋が架かっていたんですね。えっと、私達が通って来たのが第一樹で……」 「今居るのが、第二樹。次の吊り橋は第三樹と第四樹への分岐にもなっている。僕達は湖を渡って進む経路だから、第三樹への吊り橋を渡る事になるな」  地図上での表記では第二樹が森の中心辺りに。  第三と第四樹が並び立ち、確かに別々の方角へと伸びているのが分かる。  この森の周囲は険しい山脈に囲まれており、その山脈を隔てて各国の管轄が割り当てられているようだ。 「あれ? でも、第五樹の表記は有りませんよ?」 「ああ。それはこの地図のせいだな。五年単位で更新されるんだが、更新前に新しい発見が有ると、地図よりも先に管轄手続き等が行われてしまうんだ。つまり、国に認知はされているが、地図上にはまだ存在していない」 「そ、それって、新しく発見されたばかりって事ですか!?」  少々興奮した様子のノルンが、目を輝かせて訊ねる。 「確か、三年前だったかな。細菌生態や根の特性が神暦樹と一致して、第五樹として正式に認められたんだ。元々、研究や調査が長い間行われていた植物だったからな。研究の成果が実を結んだみたいで、感慨深いよ」
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