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ロウは嬉しそうに言う。
当時の事を思い返しているのだろう。
「それで、ロウさん! その第五樹はどの辺りに有りますか!? 途中で見えたりしますか!?」
透かさずノルンが矢継ぎ早に訊ねた。
只でさえ、この森は驚きと想像を越えた存在なのだ。
その中で新たに発見された要素が有るのならば、当然気にもなる。
「見えるぞ? と、いうか嫌でも目に入る」
ロウの指先は、森を抜けた先の。
湖を指していた。
「第五樹が有るのは此所。ケトスタ湖だ」
「み、湖の中に……ですか」
「百聞は何とやら、だ。ノルン君」
少しだけ含みを持たせて、ロウは多くを語らなかった。
が、ノルンの好奇心の起爆剤には丁度良かっただろう。
「早く行きましょう、ロウさん! 私、見てみたいです!」
未知の世界を目指して、あの空の下まで。
ノルンの心は遠くへと羽ばたいて行く。
しかしそれは綺麗な事だけではない。
常に、恐怖が横たわっているのである。
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