第五樹

3/3
前へ
/135ページ
次へ
 ロウは嬉しそうに言う。  当時の事を思い返しているのだろう。 「それで、ロウさん! その第五樹はどの辺りに有りますか!? 途中で見えたりしますか!?」  透かさずノルンが矢継ぎ早に訊ねた。  只でさえ、この森は驚きと想像を越えた存在なのだ。  その中で新たに発見された要素が有るのならば、当然気にもなる。 「見えるぞ? と、いうか嫌でも目に入る」  ロウの指先は、森を抜けた先の。  湖を指していた。 「第五樹が有るのは此所。ケトスタ湖だ」 「み、湖の中に……ですか」 「百聞は何とやら、だ。ノルン君」  少しだけ含みを持たせて、ロウは多くを語らなかった。  が、ノルンの好奇心の起爆剤には丁度良かっただろう。 「早く行きましょう、ロウさん! 私、見てみたいです!」  未知の世界を目指して、あの空の下まで。  ノルンの心は遠くへと羽ばたいて行く。  しかしそれは綺麗な事だけではない。  常に、恐怖が横たわっているのである。  ◆  
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加