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少しだけ、頬を綻ばせるノルン。
まさかこんな所に来て異性の話になるとは想像していなかったが。
ロウの事を何とも思っていないと言えば嘘になる。
(それに釘を刺すようで悪いんだけど。アイツはさ、ノルンとは住む世界が違うのよ)
「え?」
(そのうちに分かるわよ。ノルンはロウの事、何も知らないじゃない。……アタシは別に、意地悪で言ってるんじゃ無いからね)
ミアが結構、真剣な声色で言っているのでノルンは頭の後ろを掻いた。
確かに、少し気が緩んでいたのかも知れない。
そもそもロウがここまで手厚く付き添ってくれているのも、ノルンとミアに寄生している魔法細菌を引き剥がす為であり。
突き詰めれば、仕事上の都合である。
目的を終えれば、きっと直ぐにお別れだ。
一体、自分は何を期待していたのだろう。
途端にノルンは、シュンと肩を落とす。
集めた枝を拾い直し、抱える。
するとそこへ丁度、ロウが現れた。
枝集めに時間が掛かっている事が気になったようだ。
「すまないな、ノルン君。君一人に任せてしまったようだ」
「あ、い、いえ! そ、そそ、そんな事は全然!」
ロウが近付くと、ノルンは反射的に顔を赤くして否定する。
声は裏返っていた。
すると、ロウはノルンの抱えている枝を丸ごと譲り受ける。
「僕が持とう」
「は、はい。すいません!」
「? 何を謝っているんだ?」
ロウは首を傾げて夜営場所へと枝を運んで行く。
ノルンが後に続くと。
「そこは段差がキツイから気を付けろよ?」
言って、首だけ振り返る。
ノルンが転ばないように、見守っているのだろう。
付かず離れずの位置から静かに見詰めてくれている。
これも仕事の一つなのだろうか。
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