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「あの、ロウさん……」
心臓が高鳴って。
不意に気持ちが込み上げて、押さえ切れなくなった。
意を決して息を吸って、質問を投げ渡す。
「ロウさんは──」
その時だった。
漆黒の空から一羽の伝令鳥が降り立ち、ノルンの頭の上に留まった。
「ふえ……!?」
ノルンが驚いて身を捩ると、伝令鳥は今度はロウの頭に留まる。
「心配無い。本部からの定期連絡だ」
枝を一旦降ろすと、ロウは慣れた様子で伝令鳥を腕に移動させ。
両足に取り付けられている小さな木の筒から手紙を二つ引き抜いた。
「ノルン君、ちょっと良いか?」
「は、はい……」
すっかり勢いの抜けたノルンが、ロウから伝令鳥を受け取る。
八つ当たりするワケではないが、少しだけ。
伝令鳥を睨んだ。
気持ちを切り替えて、ノルンは伝令鳥へと木の実や麦を掌から与えた。
こんな場所にまで降り立つ事が出来るのは、相当訓練された鳥である。
「フム……」
手紙を呼んだロウは表情を険しくした。
「ロウさん、何て書いてあるんですか?」
鳥の背中や翼に付いている小さな葉っぱを取ってあげながら、ノルンが訊ねる。
「経路変更の知らせだな。この先のケトスタ湖に繋がる湖畔街道沿いに、紺碧死黴による汚染が確認されたらしい」
「え……!?」
「既に数体の堕天者が徘徊を始めているようだ」
「ど、どうして急に!?」
「いや、ノルン君。監視なら以前から行われていたんだ。第五樹の調査もあったからな。──それにしても、ここ数年での汚染区域の拡大は異常だ。やはりこの辺り一帯の水量が著しく制限されている事が原因か? 国に戻ったら、少し調べてみるか……」
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