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後半ボソボソと独り言を言いながら、ロウは手紙を二つポケットに仕舞い、枝を抱えた。
ノルンを連れて夜営場所までやって来ると、適当に腰を下ろし、早速地図を広げる。
「汚染区域は目の前で、水の中を歩けば堕天者と遭遇する可能性は高まる。このまま引き返して迂回も良いが、かなりの回り道だ」
「ど、どうするんですか?」
珍しくノルンは怯えた表情をしていた。
過去に何度か、堕天者を実際に見た事がある。
一言で言うと、凄惨な存在であった。
全身を青色の黴に覆われた、元人間。
それが堕天者だ。
人間を苗床に増殖した紺碧死黴は、汚染範囲を広げる為に堕天者を使って生きた人間を追跡、殺害する。
それは、この美しい自然の中に潜む恐るべき死の性質なのである。
修道術師はその怪物と遭遇する可能性が非常に高く、それ故護衛は必須なのだ。
しかし毎年のように犠牲者は出ているという。
「こ、この先……もし堕天者に見付かったら……!」
背筋を寒くしながら自らの肩を抱くノルンは、明らかに怯えている。
そんな彼女の頭に、ロウがポンと手を置いた。
「問題無い、その為に僕が居るんだ。君は僕が守る」
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