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「……っ」
転じて、ノルンの頬が野薔薇の様に赤く染まる。
頭の頂上から煙でも出ていそうであった。
その場からノルンが動けなくなると、気を利かせたのかミアが現れた。
自分の足で歩きたいというノルンの要望を快諾し、極力交代してこなかったミアが、ここで。
嫌な予感がノルンの頭を通過している最中、ミアはいきなり本題を放った。
「ねぇ、ロウってさ。今彼女とか居るワケ?」
(ちょおおお~~~~っ!? ミ、ミア!! ロウさんに何聞いてるのっ!?)
「? 何だその質問は?」
ロウは警戒した様子でミアを睨んだ。
それを嘲笑いながらも、切り込む。
「別にぃ~~? 大した事じゃないわよ。ただ何となく聞きたくなっただけ。アンタの事、何にも知らないし」
何か裏があるんじゃないだろうかと、まだ盛大に疑っている様子のロウだったが。
暫く返答を待っていると、やはり口を開いた。
「……いないよ」
ミアは微笑した。
この手の仕事真面目な人間は、全く任務に関係無い質問に対しても律儀に答える性質が有る。
相手が求めるなら、必ず何か答えなくてはならないと考えているからだ。
それ故に、咄嗟には嘘も吐けない。
「へぇ、意外ね。アンタって結構格好良いし、絶対いると思ったのに」
(ロウさん、いないんだ……!?)
「──何ていうか。僕には、そういう自由が無いからな」
少し悲しげに。
ロウは首元を探って小さな鎖を引っ張り出した。
鎖には、指輪が通されている。
「婚約者がいるんだ」
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