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「婚約者?」
(そ……。あ、はは……ですよね。ロウさんだし……いるよね、婚約者ぐらい……)
「ちょっと静かにして」
ミアは小声で言うと、ロウの隣に座った。
彼の掌の上の指輪を一瞥した後、更に質問を重ねる。
「いつ結婚するの?」
「……分からない。突然決まった事だからな」
「相手はどんな娘? 可愛いの?」
「さあな。まだ一度も会った事は無いよ。名の有る名家のご令嬢で、香水集めが趣味って事ぐらいしか聞かされてない」
「え、何……政略結婚って事?」
「そうなる。僕の父親は、国内における魔法細菌の培養から貿易までを取り仕切る人物だ。国の重鎮だよ」
鎖ごと指輪を握り締め、ロウは自嘲気味に顔を歪めた。
ミアも、ノルンも言葉が続かなかった。
この若さで局長の席に就いている理由が、分かった気がしたのだ。
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