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女性はノルンに座る様に促し、隣に腰掛けた。
小川の囁きを背景に女性は続ける。
「植物薬学、歩法能力、そして魔法細菌の知識。全ての能力を高い水準で習得し、修道術師として最高峰の実力を持つ。それが、教会聖堂から杖を授かる為の最低条件です。──少なくとも私には、無理でしたがね」
ノルンの肌が粟立った。
「最低条件が、最高峰の実力……ですか……!?」
「教会聖堂に認められる、というのは大変厳しい道のりですから。授かる杖に使用される材料が、世界霊樹の枝だと言えばその希少さが分かりますか?」
「え……!?」
思わず言葉を失う。
世界霊樹は、樹齢97000年と言われている世界最古の植物であり、この地上に一株しか存在していない希少種だ。
現在は教会聖堂によって厳重に保護されており、老若男女、誰しもが知っているであろう教会の象徴的存在である。
その枝を使用するとなれば、確かに条件は厳しくもなるだろう。
「貴女を救ったという修道術師は、相応の実力を持つ方でしょう。……その人との思い出、どうぞ大切になさって下さい。もう行って大丈夫ですよ?」
「は、はい!」
ノルンは頭を深々と下げ、興奮冷めぬままに『講堂』から走って出て行った。
(凄い……!)
本堂の有る教会方面へと林の中を走りながら、ノルンは満面の笑みを浮かべ、目を輝かせる。
叫び出しそうな気分だった。
(凄い凄い凄い! あの人、そんなに凄い存在だったんだ!)
自分の憧れの存在が、自分が目指す道の頂にいる。
それは初めて修道術を目の当たりにした『あの日』以来の、素敵な気持ちであった。
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