21人が本棚に入れています
本棚に追加
父親の采配一つで、配属先と座る椅子の位が決まる。
実際ロウは優秀なのだろうが、周りの人間からすれば妬みの対象でしかないだろう。
「生まれた時から、僕の人生は全て設計されていた。日常生活、交友関係、役職。そして婚約者。全て父が決めて、父が僕に与えた事だ」
「……悪かったわ。嫌な事、聞いちゃったわね」
流石のミアも、口調を和らげて丁寧に謝った。
すると、ロウが短く笑った。
「いいや。君達には、何処かで話しておこうと思っていたんだ。何だか、騙しているみたいだからな」
「ロウ……」
「──落胆させてすまない。でも実際の僕は、こんなに空っぽなんだ。全部与えられたモノで造られた、空っぽの器なんだよ」
「そんな事有りませんっ!!」
いつの間にか入れ替わって。
ノルンが纏わり付く暗闇を切り裂いて叫んだ。
これには、ロウも目を丸くして驚く。
「全部なんかじゃ有りませんっ! 空っぽなんかじゃ有りませんっ! 私の手を引いてくれた事も、素晴らしい景色を見せてくれた事も、この森を教えてくれた事も、全部みんな、与えられたっていうんですか!? そうしろって、言われたんですか!?」
「……っ」
「ロウさんは、ちゃんと『自分』を持っているんです! だから、だから……空っぽなんかじゃ有りません!」
最初のコメントを投稿しよう!