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旧湖畔街道
◆
昼過ぎ。
ロウの案内で森を抜けたノルンは、川の浅瀬へと降りたのだが。
その川は少し先でプッツリと途切れており、滝になっていた。
一時間程前に神歴樹の森は抜けているので、この辺りの純粋な地形変化によって出来たものだろう。
水草に足を取られないよう、滝の上から見下ろしてみると、滝壷の近くに壊れた木の階段が確認出来る。
そしてどうやら、その階段は森の中にまで続いているようだった。
「迂回して、あの階段の場所まで行くぞ。この辺りは滑り易いから、気を付けてな」
「は、はい」
川を横断し、対岸へと渡った二人は苔に覆われた急勾配な岩場を降りて行く。
岩場の隙間からは水の跳ね返る音が絶えず聞こえている。
川から溢れた大量の水がこの辺りの傾斜を下っているのだろう。
巨大な岩が幾重にも積み重なっているようなので、足場自体はしっかりとしていて、安心して身を任せられる。
長い年月をかけ、水の力によってここまで運ばれて来たらしい。
そしてその川の水は当然、神歴樹の森から流れ出して来ており。
この辺りの生態系を潤す事に一役買っている。
ノルンは、振り返って空を見上げた。
随分と遠くはなったが、まだ神歴樹の枝葉は空を遮る雲のように遥か頭上に存在する。
風に揺れて、手を振ってくれているようだった。
本当に力強くて、素敵な森だったとノルンは微笑する。
「お世話になりました」
そう一言呟いてから、ノルンは再び急な岩場の斜面を降りて行くのだった。
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