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滝壷の近くまで降りた二人は、木陰の有る岩場の上で休憩を取る事にした。
地面には、降りるに降りられない。
滝壷の周辺に有る森の中や地面は水を含んだ砂地になっていて、足を踏み入れると水が染み出してくる為だ。
近くを流れる無数の川の水が地面に染み込んでいるんだ、とロウが教えてくれた。
なので、休む時は必ず岩場の上に上がって休む必要があるらしい。
暫く二人は並んで座っていたが、暫くするとロウが立ち上がって一人、川の浅瀬へと入って行った。
ノルンが岩場の上で水を飲みながらロウの様子を伺っていると、ロウは浅瀬に転がっている大岩を何やら調べ始めた。
手帳を出して、岩の表面を調べている。
ノルンは岩場から降りて、ロウの近くへと駆け寄った。
「ロウさん、何かお手伝いしましょうか──」
と、ノルンは水苔で足を滑らせ、仰向けに転倒。
水飛沫を上げて浅瀬の中に思いっ切り背中を打ち付け──る、事は無かった。
素早く身を翻したロウが、ノルンを横抱きで受け止めていたのだ。
「──何をやっているんだ、君は?」
呆れた表情をノルンへと浮かべたまま、彼女の足を浅瀬へと下ろし。
ロウは自分の真横へと空いた方の手を伸ばした。
そこへ丁度、手帳が落ちて着て。
彼の手の中に収まる。
「あ、ありがとう……ございます……」
ロウの腕の中で真っ赤になったノルンが、頭と口から煙を吐いた。
「気を付けろよ。言っただろ、この辺りは滑り易いんだ」
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