旧湖畔街道

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等と悪態を付きながらも、ロウはノルンの手を引いて岩場まで連れて行った。  ノルンの手を、岩場へとしっかり掴まらせる。 「少しこの辺りの水量が気になったんだ」  手帳を片手で開きながらロウは、川の上に転がっている無数の岩を調べている。  ロウの背丈の二倍は有る岩々の、水面との境界線を注視しているようだ。  何か手伝おうと考えたノルンだったが。  手帳を片手に鋭い視線で調査を行うロウの横顔に、思わずドキリとして。  その熱を払うように、冷たい岩肌に額を押し付けた。 「ふむ。やはりそうか……」 「な、何か分かったんですかロウさん!?」 「ああ。岩肌の苔の付き具合から、この辺り一帯の水量が減っている事は間違いないようだ──って、君はまた妙な格好で岩にしがみついているな」  ロウは両手で岩肌に掴まり、そこに額を押し付けているノルンを哀れむように眺める。  自然と一体化する事で修道術の精度を高めている等と、そんな言い訳が通じるロウではない。 「ほら、手を貸す。荷物の所まで戻るぞ」 「は、はい……」  仕方が無いとばかりにロウは、ノルンの手を取って川から離れ、乾いた岩場の上まで真っ赤になったノルンを連れて行った。  ノルンは靴を脱いで日の当たる岩の上に立つ。  陽の光を浴びる岩肌は、それだけで足の裏が温かい。  サラサラと心地好い音を立てて目の前を流れる小川は澄み渡り、空と近くの森を映して煌めいていた。  隣を見るといつの間にか。  ロウも裸足になって岩の上に寝転がっている。 「あれ、ロウさん?」 「少し冷えたからな。もう少しだけ休ませてくれ。この先は特に神経を使う事になるし」 「……あの、神経を使うって、どういう事ですか?」  ノルンが尋ねると、ロウは寝転がったまま川沿いに建つ壊れた木製の階段を指差した。
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