21人が本棚に入れています
本棚に追加
等と悪態を付きながらも、ロウはノルンの手を引いて岩場まで連れて行った。
ノルンの手を、岩場へとしっかり掴まらせる。
「少しこの辺りの水量が気になったんだ」
手帳を片手で開きながらロウは、川の上に転がっている無数の岩を調べている。
ロウの背丈の二倍は有る岩々の、水面との境界線を注視しているようだ。
何か手伝おうと考えたノルンだったが。
手帳を片手に鋭い視線で調査を行うロウの横顔に、思わずドキリとして。
その熱を払うように、冷たい岩肌に額を押し付けた。
「ふむ。やはりそうか……」
「な、何か分かったんですかロウさん!?」
「ああ。岩肌の苔の付き具合から、この辺り一帯の水量が減っている事は間違いないようだ──って、君はまた妙な格好で岩にしがみついているな」
ロウは両手で岩肌に掴まり、そこに額を押し付けているノルンを哀れむように眺める。
自然と一体化する事で修道術の精度を高めている等と、そんな言い訳が通じるロウではない。
「ほら、手を貸す。荷物の所まで戻るぞ」
「は、はい……」
仕方が無いとばかりにロウは、ノルンの手を取って川から離れ、乾いた岩場の上まで真っ赤になったノルンを連れて行った。
ノルンは靴を脱いで日の当たる岩の上に立つ。
陽の光を浴びる岩肌は、それだけで足の裏が温かい。
サラサラと心地好い音を立てて目の前を流れる小川は澄み渡り、空と近くの森を映して煌めいていた。
隣を見るといつの間にか。
ロウも裸足になって岩の上に寝転がっている。
「あれ、ロウさん?」
「少し冷えたからな。もう少しだけ休ませてくれ。この先は特に神経を使う事になるし」
「……あの、神経を使うって、どういう事ですか?」
ノルンが尋ねると、ロウは寝転がったまま川沿いに建つ壊れた木製の階段を指差した。
最初のコメントを投稿しよう!