旧湖畔街道

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 それにはノルンも直ぐに気が付いている。  今まで以上に、緊張した顔をロウはしていた。  理由は分かっている。  長い間、手入れされる事無く放置された旧道をこれから進もうとしているからだ。  引き返して湖へ向かう経路はかなりの大回りになるし。  旧道を外れて湖へと下るとなると、絶えず川の中に身を置き、滑り易い崖を垂直に降りて行く事になりそうだ。  今進める経路の中で最も現実的なのが旧道なのである。  まだ旅慣れしていないノルンの体力を気遣っての、ロウの苦渋の選択。  ノルンはそれを嬉しく思う一方で、彼だけに判断を背負わせてしまっている事が心苦しかった。 「……そう、だね……。ミア。もしもの時は、お願い」 (は~い。任せといてねぇ~ん)  いつものように飄々とした口調で言葉を返すミアだったが。  「今回の旅は全部自分の足で歩くんだ」と意気込んでいた、あの頑固者のノルンが考えを曲げた事には正直驚いていた。  これもロウの影響なのだろう。  彼は気にも留めていない様子だが、ロウにばかり負担を掛けてしまっている事に、少なからずノルンは責任を感じている。  それを軽減させる為に。  ノルンもまた、選択したという事だ。  季節が移り変わるように、恋心というのは容易く少女に変化を抱かせ染め上げる。  それもまた、自然の摂理の中に確かに存在し、見る事の叶わない、閉じ込められた一つの真実なのかも知れない。 (でもまぁ。それが残酷でもあるんだけどねぇ……)  ◆
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