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森の中、それも木の根の上に造られた木造の道。
時折出現する階段を上がったり下ったりしながらも、ノルンとロウの二人は意外と順調に進んでいた。
確かに老朽化は目立つが床の痛みや軋みは少なく、所々に降り積もった落ち葉や枝葉に気を配れば苦はない。
頭上を覆う木々は強い日射しを遮り、僅かな木漏れ日だけを木製道へと降り落としてくれる。
姿なき鳥の声に耳を澄ませ、額に滲んだ汗を拭いながら、森から吹いた風にノルンは一度表情を緩ませる。
「良かった。周りの森は普通ですね」
「ああ。だが油断大敵だ。僕達は今、非常に高所を歩いている。森を無理矢理に突っ切る為に造った人工道だからな」
木々の隙間から覗く遠くの景色は、眼下に広がる岩場と滝を映していて。
強い風が吹けば、僅かに傾いては戻る。
地面や根に接地しておらず、殆どが宙に浮かんでいるかのような。
不安定な枝葉の間を通っているのだ。
両端には丁寧に手摺りまで付いているが、苔に覆われていて朽ちてもいる。
寄り掛かった瞬間に崩れるだろう。
しかし、だからといって真ん中を歩けば一気に負荷が掛かって転落する恐れが有る。
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