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ロウが緊張するのも分かる。
これが、自然から切り離され、人にも見捨てられた危険道。
途端に何処かで、「メキメキッ」と結構凄い音が聞こえた。
ノルンの足が、止まる。
「う……ロウさん……」
「大丈夫だ。今の所は、まだ崩れる心配は無い筈だ。この森が、もう何年も雨風から道を守ってくれているらしい。完全倒壊するのは、もう数年は先だろう」
「は、はい。頑張ります……! この調子で湖まで辿り着けるか、心配ですけど」
「ああ、それなら心配無いぞ。もう湖には着いている」
ロウは、足元を指差した。
小窓くらいの穴が空いている場所だ。
「下を覗いてみると良い」
ノルンが足元の穴からソッと視線を落として見ると、森の底がキラキラと光を反射しながら翡翠色に揺らめいていた。
明らかに水が流れている。
それも、森全体に広がる格好で。
「こ、これって……川ですか?」
「いや。湖の水だ。この辺り一帯の森は、湖の中に半分水没した格好で成長しているんだ。透明度が高いから、言われるまで気が付かなかっただろ?」
「凄い……綺麗です」
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