旧湖畔街道

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「本来は其処も通って湖を進むつもりだったんだがな。まあ、このまま森を抜ければ、どのみち湖の真ん中には降りられるさ。あとは、汚染の範囲だが──」 「ああ! ロウさん見て下さいっ!」  突然隣で大声を上げたノルン。  余りの勢いに、ロウは思わず腰の剣を掴んでしまった。 「どうした!?」 「アレ! 見て下さい」  ノルンが見上げて指差す先。  生い茂る枝葉の表面に、不自然に日差しに輝く結晶が幾つも見える。  重さで枝が少し垂れ下がってもいるし、寄生型の植物というよりは、鉱物に近い印象だ。 「え? ああ……何だ……ノルン君」  ロウは深く息を吐いて剣から手を離した。  持て余した左手で、自らの頭の後ろを盛大に掻く。 「アレは、湖に含まれている結晶成分だ。構造上は塩に近いらしい。この辺りの樹は湖の水を根から吸い上げているからな。葉の表面上でこうやって結晶化するんだ」 「へぇ……」  ノルンは目を輝かせて頭上の枝葉を観察した。  この辺りの葉っぱはどれも結晶の花を咲かせており、この人工道を彩っている。 「この景色は、きっと。この街道が造られなかったら、見られなかったと思います」  ゆらゆらと不規則に揺れる葉と結晶花が、ノルンとロウに複雑な影を落とす。 「──便利な事が全部、駄目なワケじゃない。だけど人は、近道をしたがるからな」  足元の隙間から下を眺めて、ロウは言う。
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