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「その近道が。いつか巨大な災いになる事だって、この世界じゃ珍しくない。現に、便利を求める国々は自然からの恩恵を受け難くなってきている。きっと僕達は、自然から離れ過ぎたら駄目なんだ」
「こ、怖い事言わないで下さい!」
不安が風と共に背筋を過り、ノルンは自分を抱き締める格好となる。
ロウが笑った。
「ああ、すまない。今のは謝るよ」
「もぉ、ロウさん!」
ノルンはそう言って怒ってみたが、今のロウの台詞は何処か、憧れの人が言っていた言葉と重なる。
─私達は、自然に生かされている─
日々世界の真理に近付く為の研究をしているであろう、杖持ちの修道術師がそう認めている。
多様化し、常に変化していく自然の力の中で、人間はあとどれくらい生きる事が出来るのだろうか。
生きる事を許されているのだろうか。
「さぁ、ロウさん。旅の続きです」
「そうだったな。君といると、退屈しないよ」
(それ、言えてる)
「ふ、二人共! どういう意味ですか!?」
それが、明日か明後日か。
それとも何百年も先なのかは分からない。
それでも、その瞬間まで確かな事は。
今の人の意志を誰が引き継いで、遠い未来にまで、生きているという事だ。
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