MISSION①〜再会〜

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MISSION①〜再会〜

振られた。 二年付き合って、もしかしたら結婚もと考えていた彼に。 互いに仕事人間で、同僚で、恋人同士というより仕事仲間というのが強かったかもしれない。 それでも時間を見つけて二人で過ごした日々も肌を重ねる心地良さも確かに好きだったのに。 一年ほど前に入ってきた派遣の若くて可愛い女の子といつの間にか付き合っていて、本命が自分からその子に移ってしまったと馬鹿正直に彼は言った。 「甘えない、一人でも平気な君に僕は必要ないだろう?」 彼はきっと、自分の上辺しか見てなかった。そして自分も見せようとしてこなかった。 別れた今、それに気付くなんて……… 恋愛偏差値なんていつまでもいくつになってもあがりはしない。 駅から遠く、その分広い割に安い賃貸マンション。 マンションの敷地前のゴミ捨て場に似つかわしくない派手な風貌の男が街灯にぼんやり照らされていた。 近づくにつれ、金髪に近い抜けた髪色、耳にはいくつものピアスが見える。 目を合わさないよう通り過ぎるつもりだった真那(まな)の腕がつから強く掴まれた。 「真那ちゃんだよね?」 「はい!?」 「俺、風我(ふうが)!」 「ふう、が……ふう………ふうちゃん!?」 「うわ、懐かし」 からからと笑う男は、真那の思い出の中の可愛いらしい少年とはまるで違った。 見上げる身長、引き締まった身体、大人の男で、それだけではなく軽薄に育ってしまっていた。 「ここで何してるの!?」 「部屋の更新料払えなくてあちこちぶらぶらして、それも尽きちゃってぷらーと実家帰ってみたら、真那ちゃんのおばちゃんが『あらじゃあお部屋決まるまで真那のとこ住んじゃえばいいじゃない♡』ってぇ」 「はあ!?」 「連絡きてないのぉ?」 「来てないよ!」 「でも、もう俺きちゃったからさぁ、よろしくね、真那ちゃん」 憎めないひとたらしの笑顔は変わっていない。 なまじ造りが良いだけに、昔からにこっと笑われたり、ちょっと目を潤ませるだけでみんな風我にほだされていた。 「よろしくねってそんな簡単にいくわけないでしょ!子供じゃあるまいし、大人の男女が一つ屋根の下でって」 「ああ、大丈夫。俺モテるし、そっちは適当に解消できるから真那ちゃんに手出したりしないってぇ」 「てきとうって、かいしょうて、」 「それにおばちゃんが真那ちゃんには彼氏いるって言ってたけどぉ?」 「……………」 「俺、弟みたいなモンですって彼氏さんに挨拶するしぃ」 なんて日なんだ。 一人でとことん落ち込んで、それでもまた何食わぬ顔で仕事に行かなきゃいけない覚悟をしようと思っていたのに。
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