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『あら?話してなかったかしら』
出勤前電話をした母親はぽかんとそう言い、じゃあ改めてふうちゃんを頼んだわよと言ってのけた。
「よろしくって」
『本当の弟みたいに大事にしてたじゃない。困ってる時はお互いさまでしょ』
「それはそうだけど…もう子供じゃないんだから」
『彼氏さんと結婚の話にでもなってるの?』
「あ………ううん、それは……」
『ふうちゃんだってまさかずっと真那のとこにいるつもりじゃないだろうし』
「………うん」
『千恵おばあちゃんもね心配してたのよ、ふうちゃん一人でいるの好きじゃないから。真那が一緒だって話したらそれなら安心するって』
「………うん」
もしかしたら結婚するかもねと嬉しそうに彼との話を喜んだ母。
昨日振られて終わったとは言えなかった。
『一旦千恵おばあちゃんとこに来てたふうちゃんの荷物そっちに送ってるから。真那も片付け手伝ってあげてね』
「え?荷物って、もう!?」
『お布団とかないとふうちゃんどこで寝るのよ。あんな大きな身体そこらへんに転がしてるんじゃないでしょうね!?』
「いや、それは」
『仲良くするのよ、じゃあね』
言いたいことだけを言うと母との電話は一方的に終わらされた。
「おばちゃん、なんてぇ?」
「………仲良くするのよって」
落ちた声で告げると風我はふはっと噴き出し、笑いながら洗い物を済ませた手をタオルで拭いてからリビングにいる真那のところにやってきて、目の前できちんと正座をした。
「真那ちゃんにしてみたらいきなり居候が現れて面倒だろうけど、なるべく迷惑かけないようにするからよろしくお願いします」
千恵ばあちゃんがしていたように絵にかいたような綺麗なお辞儀をして風我が言う。
「うん……もうわかったよ。今日帰ってきたらストック部屋片付けるから」
「あ、俺触っていーならやっとく」
「え?そういえば風我って今…」
「バイトもやってるから生活費渡すしぃ」
「……危ないバイトじゃないでしょうね」
「夜のお仕事してるお姉さん」
「やっぱり!!そんなの」
「の子供たちを預かる託児所」
「………え?」
「と、居酒屋」
正座を崩しあぐらをかくと風我はにこっと笑って見せた。
「それより!うちにいるならルールを決めよう!」
「ルールぅ?」
「そう。自分のことはなるべく自分でする。でも光熱費のことがあるから洗濯や料理は一緒の方がいい」
「晩飯は俺作るよー。真那ちゃんお仕事遅いの?」
「トラブルなければ6時頃には」
「じゃあ晩ごはんは一緒にたべよー」
「わかった。あ、それと女の子は連れ込んじゃダメだからね!」
「はーい」
「今、彼女いるの?」
「彼女?いたことないよー」
「は!?」
唖然とする真那を見て、風我はご機嫌な様子で口笛を吹いてみせた。
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