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『躾は最初が肝心だよー』
可愛いキャラっぽいキツネが踊るスタンプと同時に笑子から送られてきたLineを見て、真那は首を傾げた。
躾とは……最初とは………
美秀から二人の話し合いだったはずが、笑子も一緒に行くことになったと連絡がきていたが、もしかして躾をするのは風我のことなのか。
どういう意味なのか聞く返事を打っていると、玄関の鍵がガチャガチャといつもはしない音を立てて開けられ、忙しなく風我が入ってきた。
「おかえり、なさい…」
「ただいま!真那ちゃん!」
「はい?」
「キスしていい?キスしたい!」
この剣幕はどういうことだろう。
どんな話し合いがあったのだろう。
「何か……言われた?」
「あ、うん、とりあえず後で話す。今は真那ちゃんとキスがしたい!んだけど……」
リビングのラグの上で膝を揃えた真那が風我を見上げる。
触れたいと望まれることはどうしてこんなにもときめくのだろう。
自分だけじゃないことが嬉しいのだろうか。
それとも自分を望まれることが嬉しいのだろうか。
「私も………したい、です」
俯いた視界に風我の膝が入ってきたと思ったら両肩を大きな手が優しく掴んだ。
目を閉じる前に重なった温もりに触れられたまま顔を上げられ強く押し付けられる風我の唇は、いつもの挨拶のようなキスとは違った。
角度を変え強く重なったと思えば弱く触れるじれったいようなキスとが不規則に続く。
キスってこんなにもっともっとって欲しくなるものだっただろうか。
早鐘を打つ音が聞こえてしまいそうで思わず掴んだ胸元の手を風我の手が上から握って指を絡めて握り直した。
苦しくなった息を整えるため少し離した唇はまたすぐに塞がれるようなキスで再開された。
唇の合わせをぬめる舌が遠慮がちに舐め、驚いて引いた顔を後頭部に回された風我の手が止める。
「………いや?」
低く甘えるような声が聞いた。
小さく首を振った真那に安心したように笑って見せた風我の顔がまた傾く。
上唇を食まれ開いた隙間から熱い舌が入ってくる。
……欲しかったんだと、強く感じた。
舌を舐められ吸われ、腰が揺れる。
上顎をざらりと舐められ鼻から抜けた甘い声を聞いた風我の唇が少し上がったように感じた。
頬を包んでいた手が耳に滑り、耳朶をやわやわと揉んだ後、大きな手で耳ごと塞がれる。
濡れた絡み合う音が直接脳内に響き、飲み込むのを忘れた二人の混じった唾液が口の端からとろりとこぼれそうになったのを、風我の唇が真那の唇ごとぢゅっと吸った。
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