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翌朝眠れたのかよくわからないまま開ききらない目で段々と大きくなるアラームを止めた。
昨日のことは自分の都合良い夢だったのかとのそりと起き上がったベッドの上で思い返す。
柔く歯を立てられた下唇。
風我の口内に誘われ吸われた舌先。
熱く早くなった風我の息。
どれもすぐさっき起こったことのように鮮明に思い出され、真那は無意識に唇に指を伸ばし触れた。
以前恋人の振りをしてされたキスと、昨日したキスはどこか違っていた。
ぎこちない真那の舌の動きに合わせるようにゆっくりと絡められた風我の舌。
離さないくせに息継ぎの間を与えてくれ、息を整える前にまだ足りないと重ねられる唇の熱さにただ目を閉じ溺れていた。
バイトに行く際、玄関のドアが閉まるまで繋いでいた手は、風我が出かけた後もしばらくは温もりが残っていた。
心臓がきゅうと痛い。
痛いけれど、痛いだけではない。
これが二回目の恋、初めての時もこんなふうに切なく甘くこの胸は痛んだだろうか。
今朝は洋食にした。
風我が来た日の朝二人で食べたようなトーストにスクランブルエッグ、ウィンナーを焼いて、スープをすぐ飲めるように準備した。
玄関の鍵が静かに回される音に、真那は慌てて玄関に向かう。
おかえりなさい、お疲れ様ととびきりの笑顔で迎えるために。
「ぅわっ!びっくりした!ただいま」
「おかえりなさい、おつかれさま」
風我はもう一度ただいまと言うと、真那を引き寄せ抱き締めた。
真那も風我の背中に手を回し抱きしめ返す。
「真那ちゃんの顔見たら疲れも吹き飛ぶー」
「ふふ、私も。仕事頑張ろうって思える」
ちゅっと音を立てて頬にキスをした風我が、真那の顔を覗き込む。
「キス、していい?」
「……いいよ」
触れるだけのキスだと思った真那が顔を上げると、一瞬重なった後伺うように舌で唇を舐められた。
「え」
「真那ちゃん……口開けて」
「あ、の、でも」
「……お願い、少しだけ」
またぺろりと上唇を舐められ、そのまま舌先が唇を押し上げるようにしながら入り込む。
舌の裏側をなぞられ思わず風我に縋りついた真那をしっかり抱き締めた風我は、手を真那の後頭部に回しさらに深く舌を入れてきた。
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