461人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
あの可愛かった風我が…純真無垢だった風我が……
ショックで喋れない真那を前に、風我は少し罰の悪そうな顔をしながらも口を開いた。
「する相手が付き合ってるかないかの違いくらいじゃん」
「その違いが大事でしょ!」
「そーおー?」
「そうだよ」
「お誘いされたら断るの気の毒になっちゃうからなー」
今時の人はそんなに気軽なのか。
顔が良く生まれた人たちの間では普通なのか。
「それさ、虚しくならないの?」
「……え?」
「だって好きじゃない人とでしょ?」
「………気持ち良さは変わんないじゃん?」
「………気持ち良さ……」
虚しくないのか、と聞かれた風我はふと考える。
これまでそこそこ好きだと思う、もしくは嫌いではないからという軽い気持ちで身体を重ねてきた。
好きな人とすると違うのだろうか。
気持ち良さ、について真那は真那で考える。
行為そのものはともかく、終わった後のゆったりした時間を幸せだと思ったことはあっても気持ち良さはどうだったか。
勿論気持ち悪いとは思わなかったにしても、どうしても必要な行為とは感じなかったし、気持ち良いと特に感じることもそうなかった。
「と、とにかく、ルールは守ってね」
「はーい。あ、デートで遅くなったり部屋使う時は連絡してね。俺どっかで時間潰すから」
「え?」
「彼氏とデートするでしょ?」
「あ………、うん」
振られたんだ。
そう言って伝えたら終わるのに、何故か言えなかった。
唇をきゅっとつぐんで、真那は出勤するためにメイクを始めた。
最初のコメントを投稿しよう!