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朝6時起床。
メイクをして朝食を作り出す6時半頃、風我が起きてきて一緒に朝食を作って食べる。
後片付けは風我。
行ってらっしゃい、気をつけてね。
風我は毎朝そう言って真那を送り出してくれた。
仕事から帰ってくる真那を毎日迎えてくれるのも風我と良い香りの夕飯。
祖母の教えがよほど良かったのか、風我の作る夕飯はとても美味しく経済的だった。
季節の物を取り入れ、その日その日違うお買い得品を使い、真那の好きな和食を中心に献立を考えてくれていた。
「今日は炊き込みご飯にしてみた。明日おむすびにしてお弁当にできるよ」
「…ありがとう」
「何、かしこまって」
尖った犬歯を見せながら笑う風我はよく知っていた昔のまま。
でも身長も手も足もずっと自分より大きく逞しく、大人の男の人になった。
三つつけられた左耳、右耳には二つのピアスにゴールドのネックレス。
右手の小指につけられた指輪。
それらをつけて、風我は行ってきますとバイトに出て行く。
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
「はーい。真那ちゃんも戸締まりしっかりしてねぇ」
行ってらっしゃい。
行ってきます。
おかえり。
ただいま。
いただきます。
ごちそうさまでした。
ありがとう。
これまで一人でいた日々、口にすることのなかった言葉たち。
それを言い言われる毎日は、枯れかけた花が水を吸い蘇るような、なんだか瑞々しい気持ちにさせてくれた。
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