海

「また、駄目かー」
つい声が出てしまい、目を閉じて上を向く。
いつものことではあるが。応募した作品が全て入賞していなかった。
SNSも自分の思った結果が残せていない。
駄目なのは自分がよく分かっているが、それでも凹む。
（人に見てもらいたい、使ってもらいたい）
という思いから、色々な作品を作成しているが、技術も無いし、知識も無い。
それに
（まー、これでいいか）
という中途半端な気持ちで製作している。
（有名になりたい）
いつからかそういう気持ちが強くなってしまい、
勉強をする
技術を磨く
といった努力をしていない。
（これでは駄目だ）
と分かっているのだが、なかなか行動に移せない。
悪い空気を変えるため
（気分転換に海に行こう）
と思い、飲みかけのコーヒーを一気に飲んで、
準備を始めた。

遥か彼方に見える水平線
雲一つない空
ちょっと磯の匂いがする風
穏やかな波
波が押し寄せる音
車中の運転席から見ていてもとても心地よい。
あれこれやろうと持ってきたものに何一つ手をつけず、ぼーっと海を眺めていると
（初心を忘れているから駄目なんだ）
とふと気づいた。
（初心に戻って
　人に見てもらい、使ってもらえる
　作品を作るようになりたい）
そう思うと、
「よーし、やるぞ」
自分に気合いを入れるため声に出し、助手席に置いていた携帯を手にとった。