三ヶ月前、旅先にて

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話は一昨日の夜に遡る。私は彼の部屋を訪れていた。補足をするならば前科三犯、加えて下半身の緩い彼の部屋を。 出会いは合コン。人数分のシーザーサラダをせっせと取り分けている時だった。自分の名前が耳に届いて、そこで初めて話しかけられているのだと気がついた。 『邉見(へんみ)さん、だっけ。お皿、こっちから回すね』 『すみません、ありがとうございます。あっ、』 取り分け終えた皿を置くタイミングと彼が手を伸ばしたタイミングとが重なって、一瞬だけ指先が触れた。思わず手を引っ込めて軽く握ってしまう。 『手、綺麗だね。マニキュアも似合ってる。ローズピンクかな』 色白で中性的な顔立ち。甘いマスクの彼にさらりと褒められ、お酒が入っていたことと場の雰囲気もあって、灯った熱が回るのなんてあっという間だった。 連絡先を交換して何回か会い、ダメ元で告白してOKを貰っていた経緯もあって、浮気を問い詰めても「ごめん。もうしないから」と掠れた声で謝られてしまえば、「うん」と許してしまっていた。 結果として自分が甘かったと知るのだけれど、三ヶ月のインターバルで繰り返されればさすがに“仏の顔も三度まで”である。 ❲話したいことがあるから、明日仕事帰りにアパート行くね❳ ❲了解。気をつけてきてね❳ 前の晩に交わした短いやり取りをちらりと見返し、呼吸を整える。メッセージアプリの画面を閉じてもう一度深呼吸をしてから、インターフォンのボタンをゆっくりと押し込んだ。
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