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お姉ちゃん
「そこで何してるの?」
あたしは反射的に拓也さんから離れた。
角のところにお姉ちゃんがいた。
「今車が……轢かれるところだったの」
お姉ちゃんの表情が緩む。
「なんだ、びっくりした。凛が違う女の人みたいに見えちゃった」
安心しきった笑み。でも口調は硬い。あたしが抱きつこうとしたのは、きっとバレた。
「やだな、妹のことくらい見分けてよ」
取り繕うあたしの脇を、拓也さんがすり抜けた。
「薄着じゃないか」と、自分のコートを脱いで、お姉ちゃんにかける。
二人は街灯の光の輪の中にいた。
地続きの、同じ道に三人立っているのに、あたしを弾く。
永遠に届かない、愛されて当然の場所。
ああ、あたしは、あたしは。
お姉ちゃんになりたかった。
涙がひとすじ流れた。
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