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祝福と死
「おめでとう!」
「お幸せに!」
祝福の声が春の空へと上っていく。
お姉ちゃんと、拓也さんと、1歳の姪っ子が拍手を受けている。
あれから1年と2ヶ月が経った。
拓也さんとは何事もないまま、あたしは家を出た。
お姉ちゃんは普通に接してくる。あの夜のことは持ち出さない。だけど一線を引かれているのがわかる。
「お姉さん、綺麗だな」
隣の律がハンカチであたしの涙をぬぐう。
「……うん」
この涙がどこから来ているのか、自分でもよくわからない。
想いを伝えられなかった、後悔の涙なのか。
無事にこの光景が見れた、安堵の涙なのか。
あたしの恋心はゆるやかに死んでいくだろう。
「幸せにならないと、許さないんだから」
つぶやいた言葉はたぶん、あたしだけに聞こえた。
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