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私の名前はレイ。私が住んでいるこの街の、ちょっと面白い話をするね。
うちのお父さんとお母さんは、車屋さんなの。
毎日仲良く仕事してるの。
でもね、この辺りってちょっとした路地裏なので、
物騒な話もちょこちょこ聞こえてくるし、実際、怖い人たちもたくさんいるのよ。
だから夜になったら家にいなさいっていつも言われてるわ。
特にここに住み着いてるギャング団。
そう、ここには二つのギャング団があるの。
ひとつは、縞模様の背広をきた、通称セロ。
もう一つはいつも茶色の背広を着た通称リョウガ。
この二人の争いが絶えなくて、
お互いが顔を合わせるとそりゃもう大変。
でもなんとなく、どちらもあまり争いたくないのか、できるだけ会わないようにしてる気が時々するのよ。おかしいわよね。
彼らの言い分は、どちらもこのあたりのリーダーは、自分だって言いたいらしく、それが喧嘩の種になってる。
まぁ、わたしにしてみたら、
どっちでもいいんだけどね。
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俺はセロ。この辺りを仕切ってるギャング団のボス。とはいえ、このあたりじゃもう一人気に入らない奴がいるのさ、
リョウガなんて名前のつんけんした野郎だよ。
顔見りゃ噛み付いてきやがるから応戦しようと思うんだが、この辺りの路地裏には小さい子もたくさん遊んでる。俺はあまり相手にしたくないから、見かけたら逃げるようにしてるんだ。
そうさ、子供達のためさ、怖いわけじゃねぇよ。
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俺の名前はリョウガ。この辺りを仕切ってるギャング団のボスさ。
この辺りに最近いるセロって奴が、彷徨き始めて、治安が悪くなってきた。
だから俺はここを守るために毎日目を光らせてるのさ。
こわい?こんなことあるわけないだろ、
むしろセロの方が弱虫なんじゃないのかい?
俺を見つければ逃げるからな。
はっはっは。
やはりここは俺の縄張りだな。
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おい、最近路地裏のあたりにギャング団がいるそうじゃないか、あの辺は俺が昔から欲しかった場所だ、
一度そいつらを追い出して、手に入れるとしようじゃないか。
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リョウガさん!大変です!街のギャングが、こっちに向かってやってきてるらしい。
どうもこの路地裏を制覇するつもりだとか。
なんだって!
俺はすぐさま相手のところに向かったさ。
おい、ここは俺様の縄張りだ、
とっとと帰れ!
ふっ!茶色のス-ツなんて洒落た物着やがって
気取ってんじゃねぇぞ!
やっちまえ!
リョウガと、街のギャング団はたちまち大格闘になりました。
リョウガは、負けるわけには行きません。
必死で暴れて、必死で噛みつき、
倒れても倒れても立ち上がります。
な、なんだこいつ。しつこいな!
と思った瞬間リョウガの一撃で、街のボスは真後ろに倒れました。
この路地裏は渡すもんか!俺の縄張りだ!
2度とくるな!
リョウガはそういうと傷だらけの体を引きずって路地裏へと消えて行きました。
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ちょっと、どうしたの?傷だらけじゃないの!
おとうさん!この子見て!
車屋さんの夫婦は傷だらけで倒れているリョウガを家の中へ入れると、手厚く手当てを始めました。
リョウガは、あったかい手と、あったかい部屋で、
何日も何日も眠りました。
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最近リョウガのやつ見かけなくなったな。
ついにここを出ていったか
セロは何日も顔を見ていないリョウガのことが少しだけ気になっていました。
そこへ、兄弟のローブがやってきて
リョウガが、街のギャングを追い払い酷い怪我をしたことを知ったのです。
どうも路地裏の車屋の家で、手当を受けてるらしい
それを聞いたセロは一目散にその場所へかけて行きました。
ローブは、二人のことをずっと見てきて知っていたのです。
弱虫セロ、セロは弱いくせに去勢を張る、それをわからせたくてリョウガは、ずっと喧嘩を売っていたことを。
そしてセロもまた、自分ではどうしていいのかわからなくても、素直になれない自分を知っていたのでした。
街のギャングに襲われたら自分はきっと負ける。
それを知ってリョウガは自分から路地裏を守りに行ったんだ。
セロはいま、車屋の前で、ずっと悩んでいました。
お見舞いにと言っても一歩が出ないのです。
するとふと空いてるいる窓から、ちょっと声が聞こえました。
この家の子レイの声です
この家は、不思議な家。
入っちゃたら出られない
出られないけど幸せに
幸せになる不思議な家
こんな歌を歌いながら
顔を出すと
ニコッと笑って
セロ!待ってたよ!はやく!入ってきて!
と言いました
セロには何が何だかわかりません。
とりあえず言うがまま、家に入ると
そこには傷を負ったリョウガがいました。
二人の目があった時、
セロは素直に
リョウガに感謝の言葉を出せたのです。
ガタっと音がして、
車屋さんのお母さんが来ました。
セロを見ると
あら、またお客様?
仕方ないわよね、だってここは神様に選ばれたところだもの。
そういうと
セロの分のご飯もお茶碗に入れて持ってきてくれたのです。
セロはお母さんを知りません。
もじもじしていると、リョウガが言いました。
なぁ、知ってるだろ?猫屋敷の話を
猫屋敷だって!
そうさ、ここはあの猫屋敷なんだよ
という声を聞いた途端
セロの背広はキジトラに
リョウガはチャトラに
レイは真っ白なすがたの
猫になりました。
セロは
自分が猫だったことを思い出したのです。
猫屋敷。それは不思議な家。
神様に選ばれし家。
猫ならみんな知っているこの猫屋敷のことをリョウガは知っていました。
だからこそ、街の野良猫たちにこの家がある路地裏を取られるわけにはいかなかったのです。
もちろんセロの弱虫も含めて。
なぁセロ
リョウガが声をかけます
俺たちもたまには休戦だ。そりゃ顔見りゃむかついて喧嘩もするかもしれない。でも、俺たちでこの猫屋敷を守っていかないか?
そう言われてセロはなんだか嬉しくなって、何度も頷きました。
そんな二人をニヤニヤしながらレイが見ていました。
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ここは噂の
猫屋敷
岩津猫屋敷と申します。
すぐに見つけられない路地裏のなかに、ちょこんと建っているのです。
迷子の猫たちがきょうもやってくるかもしれませんね。
この家は幸せな家
入っちゃったら出られない
出られないけど幸せに
幸せになる猫屋敷♪
完
龍翔琉、作
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