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夜風が冷たく感じる。
部屋を横切りベッドに倒れ込んだ。グリーとの会話で疲れ切ってしまった。身体は虚弱で、まったくもってうまく使いきれていない。もっとリハビリを頑張らねばならない。
横になったまま心臓が落ち着くのを待った。
この身体を向こうに転送しても、元の世界の組成分子は毒になるから、元の世界には決して戻れない。だけどそんな事実よりもむしろ、これからのことが気になった。
きっとこれからの人生は、元の世界で貴文と美奈が互いの気持ちを通じ合わせて結婚しふたりが仲むつまじく一生を終えても、うらやましく思う暇もないぐらい波乱に満ちたものになるだろう。
そう思うと心が躍る。
わくわくした。
わたしは帝国で困難に打ちのめされ、好きな男に好きと言えなかったジュリアとまったく違う。
悪女のわたしは生まれ直したのだ。
もう引き返せない。
異世界で、わたしは姫として生きるのだ。
第7章 目覚める 完 『悪女がお姫さまになるとき』 完結
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