2.かなえちゃん

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2.かなえちゃん

 その日私は仮住まいのアパート前でひとり縄跳びをしていた。 「つまんないなぁ」  学区からかなり離れた所に引っ越したので近所に友達はいない。学校へは会社に行くついでだからと父が車で送ってくれ、帰りは母がパート帰りに拾ってくれていた。だがそうなると気軽に友達の家に寄るわけにもいかない。引っ越し先で遊び相手が見つからないものかと一度近くの公園に行ってみたのだが当然知らない子ばかり。そこには既に仲良しグループができあがっていて一緒に遊ぼうと言い出せる雰囲気ではなかった。仕方なく部屋でアニメを見たり本を読んだりして過ごしているのだがどちらかというと外で遊ぶのが好きな私は何とも面白くない。と、いうわけで縄跳びを持って外に出たのだが十分もしないうちに飽きてきてしまった。 「あーあ」  どさりとアパートについた外階段に腰を下ろし周りを見渡すとひしゃげた屋根の家や外壁の剥がれた家が目に入る。昨年の台風のせいだろう。我が家にもちょっとした被害が出て、それもあって家を建て替えることになったのだ。この辺りでも暴風で屋根が飛んだり川が氾濫して水に浸かったりした家がたくさんあったのだという。一年経った今もまだ台風の爪痕が残る家々を見ていると、何とも憂鬱な気分になった。 「もうやーめたっ!」  額にうっすらと滲んだ汗を手の甲で(ぬぐ)いひょいっと立ち上がる。そのまま階段を駆け上がろうとして近くの一軒家に目が止まった。どことなく薄汚れた感じの家だ。 (ん、誰かいる?)  窓にかかった元はペパーミントグリーンだったと(おぼ)しき色褪せたカーテンが開かれ、同い年ぐらいの女の子がこちらを見ている。思い切って手を振ってみると女の子はにっこり笑い手招きした。私は嬉しくなってスキップで彼女の元に向かう。
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