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「ってことがあったのよ」
私が話し終えると母は「ああ、そういえば」と頷く。
「こっちの家に戻るちょっと前、あんたが熱出してたのは覚えてるよ。医者にも行ったんだけど、インフルエンザとかってわけでもなく原因不明でね。随分心配したものよ。でもそのかなえちゃん? はやっぱり見たことないわねぇ」
かなえちゃんの母親は娘は病気なんだと言っていたが、ひどく痩せて薄汚れた様子の彼女を思い出すと虐待さていたんじゃないかと思えてくる。最近そんなニュースを立て続けにに見たせいかもしれない。
「ひょっとしてあの娘……」
そう言いかけた時、こたつで寝ていた父が「ふわぁ」と声をあげ大欠伸をした。
「ううん? ああ、寝ちゃってたみたいだな。母さん夕飯はまだかい?」
目をこすりながら伸びをする父を見て母は笑いながら「はいはい、すぐに支度しますね」とキッチンに引っ込んだ。
「お、アルバムじゃないか。どうだ、子供時代の写真ってのは宝物だろ?」
嬉しそうにアルバムを覗き込む父につられて私も笑顔になる。かなえちゃんの話題はそれきりになってしまった。
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